其の二

書籍レビュー
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其の二

ストレス反応を考えるときに扁桃体の役割は重要です。でも、扁桃体という一つの核というよりも、右脳の役割が重要なのだ、とあえて言い換えてみたいと思います。(扁桃体は脳の左右の半球に一つずつあり、特に右の扁桃体がキーになります。なぜなら、フラッシュバックの時に発火するのは右の扁桃体だけだから。Vander Kolk)

「ああ、右脳をよく使えば創造的になるって言うよね」、と思われたかも知れませんが、

逆です。

もしも左脳に比べて右脳の方がより過剰に活動しているとしたら、それは落ち着きのなさや気分の落ち込みを意味するか、障害か疾患を意味するかも知れません。(左利きの人のごく一部、10%未満にはこれが当てはまらないこともあるそうです)

生まれて間もないころ、右脳は左脳に先駆けて成長します。右脳が十分に発達してから左脳が成長する、この順序が大切です。(なのでセンテンスで話し始めるのが極端に早い子どもは要注意みたいです←私な。)

小児期に逆境を体験すると、多かれ少なかれ右脳にダメージを受けます。そのせいで機能が変質し、過活動になったり表面的な無反応を生んだりします。それでも順当に左脳が成長していれば、右脳を制御して一定レベルに収めることも可能です。

ここで不運なのは、女性は脳梁と呼ばれる左右の脳をつなぐ部分が男性に比べて太く、密に連携しているという点です。小さいころ、十分な左脳の制御が届かない段階で逆境を体験した女性は右脳にダメージを受け、さらにはその影響が太い脳梁を介して全脳に広がってしまうようなのです。著者は、これこそが女性に境界性パーソナリティー障害やうつ病が多い原因ではないかと分析しています。

さらにはこの右脳、本や地図の読み、書字や描画のバランス、数学的概念のイメージ、などにも関与しているようです。つまり右脳が健康的に成長できないとこれらが苦手になってしまうわけですが、女性や発達障害と結びつきがちな内容が多くて、興味深いです。

追記:脳の性差については神経神話であるとしてOECDが警鐘を鳴らすなど、議論が紛糾しています。生まれ・育ちといった単純な切り口のみならず、今後はこれまで以上に多角的な方面からの示唆がもたらされることと思います。(2022年11月29日)

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