私たちは“バブリーなポリヴェ”に耽溺していないか

身体指向の心理療法

津田真人
心身相関におけるポリヴェーガル理論の意義より↓

「この国では,2018 年の邦訳2)刊行以降,正確な理解もないままに,この理論の神経学的根拠も放擲し,媒介変数としての自律神経系の位置づけも捨象した,あたかも自律神経系 を独立変数のごとくに宣揚するバブリーな“紹介”と安直な“臨床応用”ばかりが先行し,他方それに幻惑されるあまり,自律神経系をあたかも従属変数のごとくに主張する浅薄な“批判”が飛び交う事態ともなっている.」

出典元→https://acrobat.adobe.com/id/urn:aaid:sc:AP:e3372e56-2678-4078-962e-d7bf40e2cef7…

津田先生は、日本におけるポリヴェーガル理論の広まりに最も貢献した人であり、同時に、同理論や同理論の信奉者に対して最も批判的な人だと私は思う。

理論に懐疑的な人は津田先生の大著(の特に後半)を読めばむしろ溜飲を下げられるだろうし、理論を盲目的に礼賛している人たちは原点に戻り、学び続けなければいけないのだと思う。

ちなみに。 『わが国におけるポリヴェーガル理論の臨床応用』の中で杉山登志郎はオポッサムのような仮死状態フリーズと心的トラウマの後年の反応は異なるのではないか、また、瞬間瞬間に記憶を飛ばしているのはシャットダウンとは異なるのではないか、と指摘している(pp. 16-17)。

個人的には神経支配の均衡が全身で完全に共通しているということは有り得ないだろうと思っている。それでかつて「四肢と体幹、上半身と下半身の覚醒度合いが全く異なって見えることがあるが、それは同理論でどう説明できるか」と津田先生に質問したことがあるが、「考慮すべきことが多数ある」との返答だった。

おそらく、上記講演録にある通り、“拡大”を無視したポリヴェーガル理論では語り切れない要素が多々あり、限定的な理解では理論をセラピーに活かしきれない、ということなのだろう。

私たち身体指向のセラピストは、津田先生の後に続き、同理論の“ブラックボックス”を探究し続けていく責務を負っているのではなかろうか。

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