トラウマについてNo.11 ACEs・逆境的小児期体験

トラウマについて

ACE研究は1995年から1997年にアメリカの保険会社が行った調査に始まりました。ACE(複数形でACEsとも言います)とはAdverse Childhood Experiencesの略で、逆境的小児期体験を意味します。研究が開始された当初は18歳になるまでに10の質問項目のうち、いくつ該当するかで判定されていました。質問項目はこちらから辿れます。(フラッシュバックが起きる可能性がありますのでご注意ください)

ACEの概要は、こちらのナディン・バークハリス先生の動画がわかりやすいのでおすすめです。

ACE研究が画期的だったのは、小児期逆境体験が多ければ多いほど、その後の人生に悪影響を及ぼすと証明して見せたことでした。

例えば、ACEスコアが4の人は、スコア0の人に比べて

うつ病:3.6倍、易怒性:4.0倍、喫煙:1.8~2.2倍、自殺未遂:12.2倍、アルコール依存症:7.2~7.4倍、違法薬物使用:4.5~4.7倍、早期性交:6.6倍、虚血性心疾患:2.2倍、がん:1.9倍、脳卒中:2.4倍、慢性気管支炎または肺気腫:3.9倍、小児期記憶障害:4.4倍、学習や行動の障害:32.6倍

ACEスコア6以上になると寿命までもがスコア0の人に比べて20年以上短くなるようです。
この他にも、糖尿病、頭痛、慢性疲労症候群、自己免疫疾患、多発性硬化症、依存症の発症、子宮筋腫、リウマチ性疾患、虐待の加害、認知症、生涯収入、収監される確率、老年期の残存歯数などあらゆる事柄が小児期の逆境体験と密接に関連していると考えられています。

幼い頃のトラウマ体験は、心や考え方に影響するだけではなくて、生理的な機能や身体の構造すらも変えてしまうということなのです。そして、ACEスコアが高いほど効果的なストレス対処法を習得できず、後々の経験が累積トラウマとなって悪循環を引き起こすこともあります。

ただし、心に留めておきたいのは、ACEについて知ることはままならない人生の責を生まれや育ちに帰して絶望するためではないということです。ACEの知識は、自分の現在地を知り、見通しを立てて、人生の舵を自分の手に取り戻していくためにこそ有用です。

※ASEsについてわかりやすく書かれたシリーズが出版されています。

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