トラウマについてNo.16 脳への影響

トラウマについて

福井大学の友田明美先生がタイチャー博士と一緒に研究された成果を発表してらっしゃいます。(『子どもの脳を傷つける親たち』など、読みやすい書籍もたくさん出版されています)

それによると、子どもの脳は適切な養育を適切な時期に受けられないことで器質的な変化を来してしまうのだそうです。簡単に抜き書きしてみるとこのような感じです。

◆マルトリートメント(不適切な養育)の種類で見た脳への影響 

  • 身体的虐待・・・右内側前頭前野19.1%減、左背外側前頭前野14.5%減、右前帯状回16.9%減、痛覚伝導神経の狭窄 ⇒ 行動抑制の困難、気分障害、感覚鈍麻 
  • 性的虐待・・・左視覚野8%減、紡錘状回(顔の視認)18%減 ⇒ ワーキングメモリ低下
  • 暴言・・・上側頭回14.1%増加 ⇒ 過敏性の増大
  • 面前DV・・・視覚野6.1%減、舌状回(視覚野の一部)19.8%減 ⇒ IQの低下 

◆もっとも影響を受けやすい感受性期 

  • 身体的マルトリートメント:6~8歳 
  • 性的マルトリートメント:11歳前後 
  • 海馬:3~5歳 
  • 脳梁:9~10歳 
  • 前頭前野:14~16歳 
  • 聴覚野:4~12歳 

虐待の影響の深刻さがわかりますね。でも、意外なことに最も重篤なトラウマ症状に結びついたのは、あからさまな暴力ではなくて、DVの目撃と暴言の組み合わせだったのだそうです。日本の虐待報告で最も多いのは心理的な虐待ですから、心配な結果です。

もちろん、何歳からであれ、トラウマは凍りつきをゆっくり溶かしていくことで癒やしていくことはできます。ですがやはり、社会全体で子どものトラウマを減らすことやトラウマを抱えた大人のケアに取り組んでいくことは不可欠なのです。

Verified by MonsterInsights
タイトルとURLをコピーしました