トラウマについてNo.7 防衛反応―FRIEND・FIGHT・FLIGHT・FREEZE・FAWN・FLOPー

トラウマについて

とてもショックな出来事に遭遇した時、脳の高機能な部分はお休みしてしまうことと、そんな中でも動きや感覚のような身体記憶は刻まれ続けるのだということをお話ししてきました。

今日は、トラウマティックな出来事に遭遇した時に人間がどんな風に反応するのかを見てみましょう。

また例え話をします。

今、私たちの目の前でゴジラが街を破壊し始めたとします。あなたはどんな行動をとりますか?私はきっと、一目散に逃げると思います(FLIGHT:逃げる)。もし、あなたが優れたパイロットや工学技術者や高い志を持った思想家だったなら、闘うという選択をするかも知れませんね(FIGHT:闘う)。もし、もう逃げ場がなくて追い詰められた状況ならば、物陰に隠れて息をひそめ、臨戦態勢を保ちながらじっとしている、ということもあるでしょう(FREEZE:凍りつく)。

こんなふうに急場で引き出される反応には【FIGHT】【FLIGHT】【FREEZE】の3種類(3F反応)が主として語られますが、【FRIEND:友好反応】や【FAWN(やFLOP):迎合(やシャットダウン)】などもあります(5F反応)。

【FRIEND:友好反応】は3F反応に先んじて表れるとも言われていて、例えば、ゴジラの機嫌を取って状況を好転させる機会をうかがう、なんていうことが挙げられるかも知れません。

では、【FAWN:迎合】や【FLOP:シャットダウン】とはどんなものでしょうか?
例えば、あなたが生きている世界を破壊しているのがゴジラじゃなくて仕事で取引している企業のトップだったとしたらどうでしょう?利益や雇用や仲間を守るために【FAWN:迎合】するのが得策だと判断することもあるでしょう。あるいは、帰宅した家族が毎日、ゴジラ化して家の中で暴れまわるのだとしたらどうでしょう?なすすべがなく、途方に暮れて、ただただじっとしていることしかできないかもしれません【FLOP:シャットダウン】。

(防衛反応の順番や質、迷走神経系との関わりについては、現在のところ専門家の間でも見解は分かれています。例えば、FRIEND反応よりもさらに前に状況把握の反応が出るのではないか、など諸説あります。)

こんな感じで、私たちはショックな出来事に対してとっさに「その時の自分にできる最大限の適応をする」ようにできています。緊急事態ですから、そこに意思は関係ありませんし、適応の種別に優劣はありません。ショックな出来事がトラウマとなって残るのかどうかは、①その体験自体の質(衝撃の強さ、予測できたか、選択肢はあったか、頼れる人物がそばにいたかなど)と②体験した人が持っている資(その時の年齢、助けを求める力、それまでに体験してきたトラウマの数や質、信条や価値観など)、③その出来事を受け止める社会、これら3要素が掛け合わされて決まるのです。

ですから、戦争や災害、手術や事故、暴行や誘拐のように他人から見ても明らかに負担のかかる出来事だけがトラウマのきっかけになるのではありません。犬に嚙まれたとか、妊娠・出産するとか、子どものころ注射の時に押さえつけられたとか、支援者にトラウマ体験の詳細を聞かれるとかいうことも、時にはトラウマになり得ます。

トラウマ体験が積み重なると、人はもろくなっていきます。また、ある出来事がきっかけとなってそれまでのトラウマ体験が噴き出してしまうこともあります。一見良い出来事や小さなこと、あるいは、思いやりから発せられた行動や身近な人が被害を受けた話を聞くだけでも、トラウマを残したり噴出したりする可能性があるのだということを、どうか覚えておいてください。

Verified by MonsterInsights
タイトルとURLをコピーしました