トラウマについてNo.8 ポリヴェーガル理論

トラウマについて

みなさんは、ポリヴェーガル理論をご存知でしょうか。

私たちの自律神経には交感神経と副交感神経がありますが、ポリヴェーガル理論をざっくり説明すると、その副交感神経が、脳幹(脳の一番下あたり)のおなか側から出るものとせなか側から出るものの2種類に分けられる、という内容です。

腹側迷走神経は脳幹のおなか側から出ていて、横隔膜より上を主に支配します。

背側迷走神経は脳幹のせなか側から出ていて、主に横隔膜より下を支配します。

先に書いた3F反応(5F反応)のうち、交感神経が主体となって働く時には主に闘争・逃走反応を担います。背側迷走神経が強く働く時には凍りつきやシャットダウンの反応になりますが、程よく働く時にはリラックスしたおひとりさま時間や消化を担います。腹側迷走神経は進化の過程で一番後から発展してきたもので、安全な環境で働き、伝達速度が速く、他者との交流を促して成長と回復を担うとされます。(腹側迷走神経は脳神経の一部と一緒に動作します)

これら交感神経背側迷走神経腹側迷走神経はそれぞれブレンドしながら働いています。腹側迷走神経は自律神経のコンダクターの役割をしていて、交感神経腹側迷走神経がブレンドすると「あそび」のモード、背側迷走神経腹側迷走神経がブレンドすると「愛」のモードになると言われています。

ストレスがかかった時、私たちはまず初めに伝達速度の早い腹側迷走神経→次に交感神経→それでもダメなら伝達速度の遅い背側迷走神経、という順番で発動させます。

ショックな体験をした時、
環境が安全ではなく、
他人に助けを求めることもできず(腹側迷走神経⇩)、
逃げることも闘うこともできなかったなら(交感神経⇩)、
私たちは凍りつくしかなくなり(背側迷走神経⇧)、
トラウマが残ります。

また、腹側迷走神経が十分に働かないということは、日常に「あそび」や「愛」が十分に存在しないということでもあります。

背側迷走神経は進化的に最も古くから存在する神経で、情報の伝達速度が遅く、いったん強く働いてしまうと、危険が去ってからもなかなか凍りつきモードから抜けられません。しかも、その人が普段からよく使う神経系は発達して、あまり使うことのない神経系は急場で活用することが難しいのです。

Pete Walkerは、Fightは自己愛性、Flightは強迫性、Freezeは解離、Fawnは共依存として表れると言っています。

しょっちゅうケンカしている、いつもそわそわしていて落ち着きがない、タスクを最後までやり遂げることが難しい、人付き合いが悪い、虚ろで反応が鈍い、ささいなことでも疲れたり傷ついたりする、とても臆病で挑戦することができない、、、 そんな困りごと、ありませんか?それはもしかしたら、性格や人間性がさせていることではなくて、神経系に染み付いた癖かも知れません。 身体を入り口にしてその癖を上書きしていくのが身体指向のセラピーなのです。

ただし、ここに書いた内容はポリヴェーガル理論を簡略化しすぎていますし、専門家の間でもこの理論については議論が続いています。参考にする程度になさってください。 ポリヴェーガル理論の入門書としては浅井咲子さんの「今ここ」神経系エクササイズ、という本がおすすめです。

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