其の四
いまだにアルファ波のリラックス神話がまかり通っていたり、シータ波は催眠や自己超越の脳波だと言って重宝されたりしますが、それは「健康な」「成人が」「起きている時に」「意図的に」その状況になったときに起きうるというだけのことです。神経基盤が脆弱な、子どものころに逆境を体験した人には過剰なアルファやシータは症状を悪化させるだけです。(そして、健康な人でも起きた状態で前頭部にアルファが増えたら、健康度を維持することは難しくなるでしょう)
さらに厄介なことにニューロフィードバックはなんで効果があるのか詳細はブラックボックスなので、神秘性や即効性が注目されたりしがちです。でも少なくとも、「ベースラインを引き上げる」という目的について言うならば、ニューロフィードバックは素朴で実直な、数ある療法の一つだと、私は思っています。(著者も身体にスコアされた記憶に対してニューロフィードバックは効果が薄く、タッチが必要だと書いています。)
この著書の中では多数の困難な事例やうまくいかなかった事例が紹介されています。こうした本では寛解例ばかりが踊りがちですが、そうした意味で現実に即していることは好感が持てます。そのようなわけで、発達トラウマには、臨床もコミュニティもボディーワークも、何もかも注ぎ込んだ総力戦で臨むものだ、という私の持論は、ニューロフィードバックを学んだ今も変わっていません。
他の本で子どものADHDについて書かれた言葉ですが「ニューロフィードバックは家族構成を作り出しはしない。ニューロフィードバックを行う前に家族システムを見直そう」とありました。ニューロフィードバックにできることは最高でも電気活動の再接続であって、関係性の再接続ではないのです。そして言うまでもないことですが、回復は関係性の中でしか起きえないのです。