トラウマについてNo.6 人間も動物だ!

トラウマについて

今日は、「人間も動物なんだ」、というお話です。

改めて言われなくてもわかってるよ、と思われた方、もう少しお付き合いください。実は、医療の世界に「人間も動物なんだ」という考え方が広がってきたのはそんなに昔ではないそうなんですよ。長い間、人間は特別で高等な生き物だと考えるのが普通だったので、動物と並べて語ることははばかられてきたんだそうです。

さてさて。福井の恐竜博物館さんのホームページからお借りしたこの図をご覧になってみてください(https://www.dinosaur.pref.fukui.jp/dino/faq/r02038.html)。

脊椎動物の脳って、ふくらんでいる部分は違いますけど、基本的な構造はそっくりなのがわかりますね。

そして、人間の脳がこちら。

人間は直立二足歩行なので上のイラストと向きは違いますが、脊椎動物の基本構造を受け継いでいるのがおわかりになると思います。

カラスは飛ぶし、イワシは泳ぐし、人間は未来の計画を立てます。人間は仲間と協力して共通の障害に挑むことがありますが、カエルは同種個体同士で一致団結して蛇に打ち克とうとはしません。

同じ脊椎動物であっても、それぞれの動物が必要とする機能やよく使う機能はバラバラです。それぞれの動物の脳の膨らんでいる部分というのはその動物にとってとても大切だったりよく使う機能を支えていたりするので、こんな風に基本構造は共通していても大きさや形が違っているんですね。

ちなみに「かつて、鰓(えら)呼吸や食物の摂取を受け持っていた神経系が、人間へと進化する過程でその機能を変え、仲間と笑顔や抑揚のある声を交わす社会交流の能力を司るようになっていった」と考えるのが後にお話しするポリヴェーガル理論です。いま私たちが家族や仲間や恋人と交流できるのは、先祖が使っていた鰓由来の神経のお陰なのです。

受精後、人間の脳ができてくる時には、原始的な部分から高度で複雑な部分へと順に仕上がっていきます。生まれたばかりの赤ちゃんでも自分の力で呼吸ができるのは原始的な脳がちゃんと機能しているからなんですね。反対に、人間らしい機能を担当している部分は完成するまでに20代半ば頃までかかるので、「若気の至り」なんて言われるようなことをやらかしてしまったりするわけです。

トラウマティックな出来事に見舞われた時、私たちの大脳(人間的な脳)はお休みしてしまって、かわりに原始的な脳がフル回転します。命を脅かされるような状況では、深く考えるよりもとにかく生き抜くことの方が大事だからですね。その結果、原始的な脳や身体が覚えている記憶が大脳と連携できないままになって、「わかっているのにできない」というトラウマ症状に苦しむことになってしまうのです。

でも、脳には可塑性といって何歳になっても変化を起こせる柔軟さがあります。しかも脳は身体と心の両方を司っていますので、身体からアプローチすることでも脳や心の可塑性に響かせていくことができるのです。

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