トラウマについてNo.17 トラウマインフォームドケア(TIC)

トラウマについて

これまでお話ししてきた通り、個人が経験するトラウマがその後の人生を決定づけてしまうことがあります。トラウマティックな個人的体験は、単回性の事故や長期にわたるいじめ、不適切な養育など、枚挙に暇がありません。

一方で、以前にもお話ししたように、個人の努力の範囲をはるかに超えて存在するトラウマというものがあります。それはコミュニティーが世代をまたいで受け続ける差別や大規模災害、テロや戦争、世界規模のパンデミックに至るまで、あらゆる場所のあらゆる歴史の中に見られるものです。

こうしたあらゆるトラウマを想定して物事を見ていくことを、トラウマインフォームドケアと呼びます。トラウマインフォームドケアに基づいて既存の価値観を脇に置き、トラウマのメガネを通して見て、組織の仕組みを変えたり、啓蒙活動をしたり、特定の個人をケアしたりしていこうとする動きは、少しずつ広まってきています。

トラウマインフォームドケアは、何もかもをトラウマのせいだと片付けてしまうことではありませんし、加害者の罪を見逃すためのものでもありません。まして、養育者や行政に責任を丸投げしたり、絶望したりすることとは対極にあるものです。

トラウマインフォームドケアでは「4つのR」を重視します。「4 つの R」とは、 トラウマの広範な影響と回復の可能性を理解(Realize)し、トラウマの影響で出現しているかもしれな い症状のサインに気づき(Recognize)、トラウマに関する十分な知識を統合して対応(Respond)し、 再トラウマ化を防ぐ(Re-traumatization) -という意味です。

この4つのRを使えば、例えば、教室の隅でいつも一人遊びばかりしている子どもや、ひんぱんに威圧的なクレームを持ち込む人や、固く約束してもすぐに嗜癖が戻ってきてしまう人の中に、問題点ばかりを探すのではなく、「何が起きているんだろう?」という視点から関わることができます。

ふだんから積極的に「手洗いやうがいが感染症を予防する」という知識を啓蒙しておけば、パンデミックの際にもスムーズに生活の中に取り入れることができますよね。そんな感じで、公衆衛生の考え方にならってトラウマインフォームドケアを広げていくことができれば、社会全体の底上げをすることができます。トラウマインフォームドケアが拠って立つのは、そうした大局的な視点なのです。

トラウマインフォームドケアが拠って立つのは、そうした大局的な視点なのです。

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