トラウマについてNo.12 HPA軸

トラウマについて

子どもの頃の逆境体験がその後の人生に影を落とすことについてお話ししてきました。今回は、そもそもストレスを受けると私たちの身体がどのように反応するのかを簡単にご紹介してみます。

以前、3F(5F)反応について書きました。

私たちの身体は、ストレスがかかるとアドレナリンを出して短期決戦に挑みます。それで対処し切れなかったり、ストレス状況が続いたりすると、今度はコルチゾールを出して長期戦に備えます。それでも効果が上がらないと、最後にはコルチゾールの分泌が止まってしまいます。

コルチゾールはステロイドホルモンの一種で、炎症を食い止めたり、血糖値を上げたりして、身体を護る働きをします。コルチゾールは必要な時にさっと分泌されて、不要になったらさっと分泌が止まるのが理想です。コルチゾールは過剰に分泌されると自分の身体までも攻撃してしまいますので、分泌の過剰も不足も、人体には害となります。(ぜんそくやアトピーのお薬に入っているステロイドを思い浮かべると、影響の大きさがイメージしやすいかも知れませんね。とても効果が高い反面、使い方には慎重さが求められますよね。)

子ども時代に繰り返し虐待を受けるなどして何年もストレスフルな生活が続くと、コルチゾールは出過ぎてしまったり、まったく出なくなってしまったりします。特にトラウマ記憶はいつまでも色褪せることがないので、大人になってからも常に警戒モードが続きがちになり、分泌のバランスが破綻してしまうことがあるのです。

私たちの身体は、アドレナリンやコルチゾール以外にも甲状腺ホルモンや性ホルモンや筋肉の緊張や交感神経の亢進など、さまざまな生理的反応を起こしてストレス対処をしています。その対処が効果を上げず、いつまでもストレスフルな状態が続くと、司令塔である脳は混乱し、神経系や身体の機能や構造にダメージを蓄積させることになります。こうなると、アドレナリンやコルチゾールの直接的な影響と合わさって、深刻な疾患を引き起こしてしまうことにつながるのです。

脳から司令を送り、副腎皮質からコルチゾールを分泌させる経路をHPA軸(H視床下部・S下垂体・P副腎皮質)と呼びます。HPA軸は連携して機能しています。トラウマによってコルチゾールが過剰・もしくは不足している場合、その原因は【P副腎皮質】にのみ存在しているわけではなく、【HPA軸全体】の機能や調整力の低下を考える必要があります。

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