トラウマについてNo.13 生まれる前の傷、生まれた後の傷

トラウマについて

ナチスからの侵攻を受けた当時のオランダでは、食料が極端に不足して大規模な飢餓状態に陥っていました。その頃に母親のおなかの中にいた赤ちゃんたちは、成長してから肥満に悩まされたり、様々な病気にかかったり、若くして亡くなってしまったりすることが多かったそうです。

赤ちゃんは母親のおなかの中で、これから自分が生まれ落ちる世界がどんな感じなのかを一生懸命サーチしています。このオランダの例で言えば、赤ちゃんたちは【外の世界はとても危険なのでいつも臨戦態勢でいなきゃいけないぞ】と判断して生まれてきたのでしょう。そのために強い警戒状態が続き、神経系・内分泌系・免疫系などに、あらゆる調整不全をきたした状態になってしまったものと思われます。(前回の記事も参考にしてください)

外界をサーチしているのは、なにもおなかの中にいる時だけではありません。私たちは今この瞬間も繊細に外部や内部の環境をサーチしながら、懸命に適応しようとしています。時にその適応は遺伝子にまで及び、次の世代へと引き継ぐこともあるのです。これをエピジェネティックな変化(遺伝geneticをこえたepi、後天的な変化)と言ったりします。

オランダでの飢餓やホロコーストを経験した人は、その子孫にまでも影響が残っていたといいます。9.11テロの際に妊娠中だった女性達を調査した結果からも、世代を超えた影響がわかっています。私たちの遺伝子は何世代にもわたって記憶を受け継ぎ、子孫が逆境的な局面を生き抜けるようにギフトを残す仕組みがあるのです。

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